キツネが見せてくれた生と死

2017/11/03

今年もムッレ教室が始まった
(森のムッレ教室は、スウェーデンで始まった5〜6歳児を対象にした環境教育プログラムです)

 

子どもたちが自然と向き合い自然を知るプログラムだ
のっぱらでは年長の秋になると特別の時間が森で始まる

 

それは、森の中を歩いていた時だった!

 

何かがいる!?

動物だ!!

キツネだ!!

道の端に丸まって目を閉じてじっとしている

死んでる?

ううん、お腹が上下に動いている

生きている

なんで逃げない?

あったかいからここにいるの?

 

子どもたちはキツネをびっくりさせないよう、誰も喋らない
踏んだ草の音もたてないようにそっと歩いた

 

これが子どもたちとキツネとの最初の出会いだった
1回目の出会いは喜びと感動だった

 

 

1週間後のムッレ教室

 

また同じ場所を通った

なんだか変な匂い

 

キツネは・・・・

 

一瞬で分かった

 

もう命がない事が

 

子どもたち固唾を呑む

 

半分腐敗が進みキツネの体は前とは違っていた

そこには虫たちの営み

なんともいえない腐敗臭

 

誰も何も言わない

ただそこに佇む

 

1週間前確かにここに命はあったのだ

今はもう物体となったキツネの体

 

 

静かに手を合わせた

 

 

後から子どもたちに聞いた

キツネさん死んでいたのは分かった?

 

うん、分かった

 

大人は死んでいるとは言わなかった
子どもたちも死んでいるとは言わなかった

言葉はなくとも
恐らくこんな大きな動物の死は初めてでもそれが分かった

 

なんか悲しい
キツネがかわいそう

と表現した
表現したけれど、その言葉だけでは表せない、生まれて初めてのこの感情

 

嫌な気持ちや気持ち悪いとかそういった感情は全くない

命があったのに今ここにはなくなった、
という事実を一生懸命心で受け止めようとしている

 

またあの道を通るのか?と私は聞いた

 

また通る

 

いつもは埋めるのにどうして今日は何も言わなかったの?

 

このまま見た方がいい
と子どもたち

 

いつも動物たちの死と出会ったときは
(モグラやネズミなど小動物やカエルや虫たちとの死やと出会いは日常的にある)
子どもたちは土の中に埋めて手を合わせる

 

しかし、今日はキツネに対してはなんだか
埋めるという行為よりも

その過程を
森で生まれたキツネが森に還っていくその過程を見届けた方がいいと言うのだ

 

それがキツネの命に関わったものとして自分たちのできる事なのだと言うかのように
揺るぎない眼差しでうなづく子どもたち

 

私は覚悟を決めた

 

キツネが見せてくれた生と死

 

それに真摯に向き合う子どもたち

 

子どもたちが何を感じ何を思うのか?

子どもたちの柔らかい心に何が刻まれるのか?

 

見守っていきたいと思う

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